アーティストトーク vol.02 / 山田理沙

染織から版画へ

 

2022年10月29日までギャラリーカフェふくで個展を開催中の山田理沙さん。作品についても、ご自身についても、自分からはあまり多くを語られない山田さんですが、店主は聞いてみたいことが色々あって、在廊の合間にお話を伺いました。

 

山田理沙さんは兵庫県豊岡市の出身で、美術に関わる仕事をしながら、自身の作品を制作されています。モノタイプ、コラグラフ、シルクスクリーンなど、複数の版画の技法で構成された作品は、どれも1点ものになります。現在は版画の作品を制作している山田さんですが、大学で勉強していたのは意外にも染織だったそうです。

 

高校生まで山間部に暮らしていたこともあり、ギャラリーや美術館などにいく機会は少なかったけれど、お父さんが美術の教員だったそう。直接ではないかもしれないけれど、きっと日常的に「美術」というものがこっそり染み付いていたのではないかなと店主は思います。手を動かして自分で作る方がいいかも、という感覚から美大で染織を学ぶ道に進まれました

 

しかし手仕事を身につけるイメージで選んだ学校では、作品作りの方を求められたそう。小さな違和感を覚える中、他学部の版画の作品を見る機会があり、京都で版画の教室に通いました。そこで銅版画を知り、他の教室でもモノタイプやコラグラフといった手法と出会っていかれました。小さなパーツの組み合わせ、インクをのせる、そういったある種の手作業が山田さんにはしっくりきたのでしょうか。

アーティストを続けていくこと

 

学生時代にアルバイトをしていたギャラリーで展示したり、卒業後は仕事を続けながら作品を制作し、2017年には大阪市のギャラリーitohenさんで個展を開かれました。ギャラリーカフェふくの店主も、イラストレーションの新しい表現として版画を模索しているところ偶然見たitohenでの山田さんの版画作品に惹かれたのを覚えています。黒とゴールドで一つの面の中にテクスチャーの違う版が重なったり、向かい合ったりしている。その作品は今も店主の仕事場の壁にかかっています。

 

年月が経ち、結婚や出産、移住と大きな環境の変化を迎えた山田さん。家具作りを生業とするパートナーの作業小屋の一部に、自身のプレス機を置いたアトリエをかまえたそうです。

 

開催中の「 you are my waltz 」で展示された新作はシンプルな線と面たちが、歌うように、踊るように、たゆたうような、リズムでそこにあります。その形も色も意味がないことを楽しんでいるような気がします。一定のテンポではない子守唄が聞こえてきそうです。








作品の在り方

 

小さく家においてもらえる

生活のなかの身近に飾れる作品を。

 

額装ではない形でも作品を手にとって欲しいと考えた山田さんは

版画を箱に貼ったシリーズも展示しています。

その箱は、ひとつひとつに心地よい存在感があります。

たとえば玄関の靴箱の上に置いておく。

ブローチの収集のために。

大切にしている手紙の保管に。

 

いろんな情報やものがあふれる今に、本当はどれが大切なんだろう。

その「大切」のために特等席を作ってあげたい。

華美すぎず、ひかえめな存在感があり、、、この箱はそんな雰囲気をまとっています。

 

作品を休ませるための布のふちにミシンをかけたり

箱をのせるための展示台を作ったり

ひとつひとつの作業を楽しみながら丁寧に、自分のものさしで、自分のペースで。

アーティストとして活動していくことの一つの形を、今回の展示で山田さんに教えていただいた気持ちです。

 

秋から冬への気配がする若桜の山々に見守られながら

この空間にぜひたくさんの方に身を置いて欲しいと思います。

 

作品の一部はオンラインストアでもご案内しています。

遠方の方はぜひご覧くださいね。

https://fukuwakasa.stores.jp/