青木幸太写真展を終えて

6月の展覧会 青木幸太写真展「光色飛行」が会期を終えました。

お楽しみいただけたでしょうか。

青木さんの写真が壁にあることを、私たちは「小さな窓」と呼んでいました。

その向こうに広がる、透き通る緑青の海や、浮かび上がるクモのレース。

季節も時間も超えることができる優しい光を抱えた、写真たち。

青木さんは「普通の写真」と言います。

果たしてそれは、手軽に撮られたものでしょうか。

普通を普通だと受け止めさせる裏には、真似できない技術やこだわりがあり、

フィルムカメラという制限の枠を楽しみながらカメラを構える青木さんの姿がそこにあります。

手軽に誰でもが写真をデータとして記録することができるようになった時代に。

写真の価値はどう変わるのかということを、久しぶりに考えました。

絵画が、写真の出現とともに、写実だけを追い求めるのをやめた時代があり

そこからアートという新たなステージに、絵画は新しい流れを生み出しました。

Photo by 青木幸太

本展で目の前にプリントされた写真は、

静かで気取らない。でも質の違いが、はっきりと感じられました。

私が特に好きだったのは、トンネルの向こうに老人がいる写真でした。

一瞬、私と彼は目が合い、交信できるような微量な電波が流れる。

そんなことを写真から感じるのは、とても久しぶりでした。

会場では照明をあえておさえ、自然光で見ていただきました。

音楽をかけることなく、自然音が入ってきました。

時折、水路の音が写真の世界とシンクロすることがあったり。

青木さんが作品とこの場所の関係性を大切に思ってくれていることが伝わり、うれしかったです。

Photo by 青木幸太

また、撮影会では多くの方にご参加いただきました。

生まれる前の命から、ご自身のいつかのための写真まで。

人が写真のこめる思いに改めて気がつかされた気がします。

撮影会での様子。

若桜町にゆかりのある写真家として、

いつかこの町を撮ることにも取り組んでほしいな。

そんな楽しみを残しつつ。

さて、1ヶ月の会期はあっという間に過ぎてしまいました。

光色飛行は次の町へと、旅に出るようです。

ご来場いただきました皆様

撮影会にご参加いただきました皆様

記事を取り上げてくださいました、日本海新聞さん

いつも温かく見守ってくださるご近所さん

ありがとうございました。


さて7月の展覧会が間も無く始まります。

どうやら「小さな窓」の次は「異界への入り口」がやってきそうです。

どうぞお楽しみに。

ふくとかど 店主 ひやまちさと

©️ 青木幸太 光色飛行 2021  / 写真の無断転載を禁じます。